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シュターツカペレ・ドレスデンの歴史

2007年1月17日 (水)

シュターツカペレ・ドレスデン(StaatskapelleDresden)はドイツ・ザクセン州ドレスデンに本拠を置くオーケストラです。世界最古とされるその歴史は、1548年にまでさかのぼることができますが、同年にザクセン選帝侯モリッツが創設した聖歌隊に7人の楽士が加わった1554年をもって宮廷楽団の設立とする説もあります。前者であれば今年2007年で創設459年、後者としても453年となりますが、いずれにせよ、聖歌隊の初代楽長ヨハネス・ワルターが『宗教改革』で知られるマルティン・ルターの友人、1617年に楽長に就任以降55年間にわたって宮廷楽団のとしての発展の基礎を築いたのが、ドイツ・バロックの巨匠ハインリヒ・シュッツといいますから、その存在はもはや歴史的な文化財であるといっても過言ではないでしょう。
 シュッツの後も、ハッセ、ウェーバー、ワーグナーなど著名な作曲家がその指揮台に立ち、ウェーバーは自作『魔弾の射手』をドレスデン初演、ワーグナーは『リエンツィ』、『さまよえるオランダ人』、『タンホイザー』と次々に新作を発表し、シュターツカペレ・ドレスデンが現在もなお得意としているレパートリーが作曲者自らの指揮によってオーケストラに伝授されます。
 シュターツカペレ・ドレスデンのもうひとつの中軸レパートリーであるリヒャルト・シュトラウス作品の基礎を築いたのは、エルンスト・フォン・シューフだったとされています。1889年に音楽監督に就任、ワーグナーの『トリスタンとイゾルデ』と『ニーベルングの指輪』のドレスデン初演を成功させて名声を得たシューフは、リヒャルト・シュトラウス作品を積極的に上演、『火の欠乏』、『サロメ』、『エレクトラ』、『ばらの騎士』を初演して、この作曲家の真価を世に知らしめます。シューフの没後も『エジプトのヘレナ』、『アラベラ』、『ダフネ』などが初演され、結果的にリヒャルト・シュトラウスが作曲した15のオペラのうち、実に9つがドレスデンで初演され、ゼンパー・オーパーの名で知られる宮廷歌劇場(ゴットフリート・ゼンパー設計により1824年に完成)は、ドイツ・オペラの重要な中心地として全ヨーロッパにその名声をとどろかせます。
 シュターツカペレ・ドレスデンがレコード史に登場したのはカール・ベームの時代です。ベームとシュターツカペレ・ドレスデンは1938年から42年にかけて、ブルックナーの交響曲第4番、同じくブルックナーの交響曲第5番、ベートーヴェン:交響曲第9番などをドイツ・エレクトローラにレコーディングしています。
 ベームの後、第2次世界大戦末期にはカール・エルメンドルフが音楽総監督に就任しますが、1945年2月13日の英米空軍による『ドレスデン空爆』によって街は壊滅的な打撃を受け、伝統あるゼンパー・オーパーも消失してしまいます。
 戦後はヨーゼフ・カイルベルトによってオーケストラが再編され、1948年からはシャウシュピールハウスでオペラ公演を再開します。その後、ルドルフ・ケンペ、フランツ・コンヴィチュニーがオーケストラを引き継ぎ、コンヴィチュニー時代の1954年には初のパリ公演をおこなって復興を印象付けています。
 1956年からはロヴロ・フォン・マタチッチが音楽総監督に就任。翌年にはカール・ベームがレコーディングのために久々にドレスデンの指揮台に立っています。空爆の爪痕が深く残る街の様子にベームは大きな衝撃を受けたといわれていますが、この時から1960年かけて録音された『アルプス交響曲』、『英雄の生涯』、『ばらの騎士』、『エレクトラ』など一連のリヒャルト・シュトラウス録音は、ベームとこのオーケストラの特別な結びつきを示す名盤としていまも高い評価を受けています。
 1960年にはオトマール・スウィトナーが音楽総監督に任命され、1964年にはクルト・ザンデルリングが首席指揮者に就任、1963年にキリル・コンドラシン指揮でおこなわれたショスタコーヴィチの交響曲第4番ドイツ初演は、戦後ソヴィエト陣営に組み込まれたドレスデンを象徴するものとして重要です。
 レコーディングでは、ベーム指揮の『フィデリオ』、ケンペ指揮『ナクソス島のアリアドネ』、サヴァリッシュ指揮のシューベルト:交響曲全集などの名盤が、60年代後半を飾っています。
 1970年代に入ると、レコーディングはさらに活発化します。カラヤン指揮による『ニュルンベルクのマイスタージンガー』、ケンペ指揮のリヒャルト・シュトラウス:管弦楽作品集、ザンデルリング指揮のブラームス:交響曲全集、サヴァリッシュ指揮のシューマン:交響曲全集、さらに、ブルックナーのスペシャリストとして知られた名指揮者オイゲン・ヨッフムとのブルックナー:交響曲全集、ベーム指揮による『イドメネオ』、『後宮からの逃走』など重要作が相次いで登場します。1973年におこなわれたカルロス・クライバーの衝撃的なデビュー録音『魔弾の射手』は、クライバー自身がシュターツカペレ・ドレスデンとの共演を熱望したとされています。カルロス・クライバーは1980年にもふたたびドレスデンを指揮して『トリスタンとイゾルデ』をレコーディングしています。
 また、カラヤンとの共演は、ザルツブルク音楽祭からの招聘への呼び水となって、シュターツカペレ・ドレスデンの名声をますます高めることとなり、日本へもクルト・ザンデルリングに率いられて初来日して多大な感銘を与えています。
 レコーディングでは、ヘルベルト・ブロムシュテットとのコンビも重要です。1975年に首席指揮者に就任したブロムシュテットの率直な音楽性は、シュターツカペレ・ドレスデンの美質を100%引き出すとも評され、ベートーヴェン:交響曲全集、シューベルト:交響曲全集、ドヴォルザーク:交響曲第8番や、DENONへのブルックナーの交響曲第4番&第7番、リヒャルト・シュトラウスの管弦楽曲集等々、発売当初から高い評価を得ている名盤揃い。ベートーヴェン:『合唱』のライヴも忘れがたいものです。
 1985年、消失したゼンパー・オーパーが建設当時の設計図に基づいて再建され、東西ドイツ統一という社会的な大変動の時期も、名誉指揮者兼オペラ担当にコリン・デイヴィス、オーケストラ首席指揮者にジュゼッペ・シノーポリという体制で乗り切ります。デイヴィスはオーケストラ・コンサートにも登場、レコーディングもベートーヴェン:交響曲全集、シューベルト:交響曲全集などを完成、シノーポリはブルックナーの交響曲集やシューマン:交響曲全集などオケのお家芸はもちろん、シェーンベルク、ベルク、ウェーベルンなど新ウィーン楽派の作品集をレコーディングして新風を吹き込み、オーケストラのイメージを刷新する活動を展開しますが、2001年に急逝してしまいます。2002年8月から後任としてベルナルト・ハイティンクが選出され、大いに期待されましたが惜しくも短命に終わり、2007年8月よりファビオ・ルイージがゼンパー・オーパー音楽総監督就任と同時に音楽監督(カペルマイスター)に就任する予定です。
 今年新たな段階を迎えようとしているシュターツカペレ・ドレスデン。昨年の11月にはチョン・ミョンフンに率いられてのアジア・ツアーを敢行し、東京と大阪でわずか3公演ながら、個性的な指揮者の要求に万全に対応しつつ伝統的な音色美を堪能させ、そのポテンシャルの高さを改めて強く印象付けたことは記憶に新しいところ。
 そして2007年11月には、26年ぶりとなる待望のオペラ来日公演が予定されています。新音楽総監督ルイージが『タンホイザー』と『サロメ』で真価を問い、そして『ばらの騎士』では準・メルクルが登場することも大きな話題を呼びそうです。
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マーラー:交響曲第9番、R・シュトラウス:『死と変容』 シノーポリ&シュターツカペレ・ドレスデン

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