ルセ&レ・タラン・リリク、フランスで100年にわたって愛され続けた
当時のフランスの顔ともいえたリュリのオペラ『テゼ』を録音!
クリストフ・ルセとレ・タラン・リリクが探求を続けているリュリ。このたび、リュリの3作目のオペラである『テゼ』が登場します。録音がきわめて少ない作品で、このルセによる録音はまさしく大歓迎の新録音といえるでしょう。
テゼ(=テセウス)はギリシャ神話の人物で、ミノタウロス(牛頭人身)退治などで知られますが、ここではテゼの若い頃が舞台となっています。筋書きは、テゼに思いを寄せるエグレ(アグラエア)とメデ(メデア)を中心に、魔術師が登場、宮殿(ヴェルサイユ)やアテネなど舞台もめまぐるしく変わるなか、最後はエグレとテゼが結ばれる、というもの。ヘンデルのテゼオ(1713年)など、リュリ以降も多数の作曲家たちによってこの物語をオペラの題材にしています。
初演に際し、ちょうどのタイミングでフランス軍が戦いに勝利したというしらせを受け、リュリと台本作者のキノーは、急遽プロローグを朗らかな内容に変えるなどし、ルイ14世を戦いの神とするようなテキストも盛り込まれています。器楽編成も、当時絶大な権力を誇ったリュリの力をフル活用し、大編成をとりました(「王の24のヴァイオリン」さらに「21の小ヴァイオリン」(ラ・プティット・バンド)が参加)。さらにあのオトテール兄弟(フルートとオーボエ)も参加、そしてトランペット奏者には王のボディーガードを起用するなど、大編成な管弦楽と、王を喜ばせるポイントも多数盛り込んだ編成にしています。はたしてこの作品は大成功をおさめ、初演の1675年1月15日から翌年4月まで、休止期間はあったものの週3回のペースで上演されました。また、1754年のルイ16世の生誕の祝宴などでも演奏されるなど、フランスという国を代表するオペラでありつづけました。リュリの音楽の驚くべき声楽の雄弁さは圧倒的。また、器楽のみの楽曲も、たとえばトランペットやティンパニが活躍する第1幕第10場の「生贄の司祭の行進」など、実に華やかにして贅沢。ルイ14世とリュリ、両者が当時圧倒的な力をもっていたことも実感させられる壮麗な作品です。
ドラマの中心にいるのはメデ(=カリーヌ・デエ)。意志が強く悲劇的なメデの姿を華麗に演じ、リュリのオペラの中でも最も熱狂的な作品である本作の魅力を存分に引き出し、聴かせます。マティアス・ヴィダルとデボラ・カシェのデュエットにも胸をうたれるなど、聴きどころ満載。リュリがつくりあげた壮大な音楽を、ルセが最高の歌唱陣と器楽奏者たちを率いて、これ以上ないかたちで壮麗に響かせます。(輸入元情報)
【収録情報】
● リュリ:歌劇『テゼ』全曲
テゼ/
マティアス・ヴィダル(テノール)
メデ/
カリーヌ・デエ(メゾ・ソプラノ)
エグレ/
デボラ・カシェ(ソプラノ)、ほか
ナミュール室内合唱団
レ・タラン・リリク
クリストフ・ルセ(指揮)
録音時期:2023年3月3-5日
録音方式:ステレオ(デジタル)