19世紀イタリアの3弦コントラバスによるボッテシーニ作品集
アルベルト・ロ・ガット
日本語解説・訳詞付き
〜19世紀イタリアの3弦コントラバス、超絶技巧とカンタービレ〜
コントラバス好きなら、誰もが待ち望んでいたはず−「3弦バスでのボッテシーニ」を、
ボッテシーニと同郷のイタリア人奏者が、イタリア19世紀の銘器でたっぷり味あわせてくれる!
「コントラバス=野趣」の通念を易々と覆すノーブルさ。伴奏も古楽器、名花ガッリの歌も絶妙。
完全新録音、コントラバスという楽器に興味を持った方が必ず一度は通る「コントラバスのパガニーニ」、19世紀イタリア出身の世界的名手=大指揮者=作曲家ジョヴァンニ・ボッテシーニの作品集を、古楽器で! というより、そもそもコントラバスという楽器はもともとヴィオラ・ダ・ガンバ属とヴァイオリン属どちらの最低音楽器でもあった不思議な歴史をもつ楽器なこともあり、現在ふつうのオーケストラで使われているものさえある意味古楽器が普通に混ざり込んでいるようなところもあるのですが(そもそも弦の数からして4〜5本(まれに6本や3本)でいろいろ)、それでもめったに見かけないのが、超絶技巧のヴィルトゥオーゾたちが活躍した19世紀にはソリストのための楽器として重宝がられていたことが知られているはずの「3弦コントラバス」。コントラバスという楽器がチェロのように艶やかなカンタービレを奏でられ、ヴァイオリンのように敏捷なパッセージで人を圧倒することも不可能ではない! と実演で示したスーパープレイヤーのボッテシーニ自身、有名な肖像写真では3弦バスと一緒に映っていたりするのですが、この楽器を使いこなそうという意識になるプレイヤーと、実際にボッテシーニを弾きこなせるくらい腕がたつプレイヤー(これは録音物を出そうという人となると、もう世界的に数人レベルまで絞り込まれるのでは?)というのがなかなか重ならなかったのか、録音の世界ではついぞ見かけないように思います。
そこへ登場したのがこのアルバム! 2003年までミラノのジュゼッペ・ヴェルディ響やイタリア・フィルといった重要なオーケストラの首席奏者を歴任してきたトリノ生まれのイタリア人奏者アルベルト・ロ・ガットは、ラ・ヴェネシアーナやモード・アンティクオ、ラ・リゾナンツァ(古楽ファン垂涎の名前が並びます)といった世界に冠たるイタリア最前線の古楽バンドでも活躍を続けるかたわら、過去10年ほどのあいだ着々とこのソロ企画を練り上げ練習を重ねていたとのこと。ボッテシーニが指揮者として『アイーダ』のカイロ初演を振った年、1871年にパリで作られたオリジナルのエラール・ピアノをバックに奏でられる3弦バスの響きは、楽音というよりは風圧のパワーで聴き手を圧倒するようなところもある現代楽器コントラバスでのボッテシーニ演奏とは明らかに違う、あでやかでしなやか、羊腸(ガット)弦の味わいと上品な倍音をたっぷり感じさせてくれるノーブルな演奏に。超絶技巧はより軽やか、カンタービレはよりしなやか、コントラバスは確かにヴィオラ・ダ・ガンバの子孫だったということを強く印象づけてやみません。異才集団ラ・ヴェネシアーナの名花E.ガッリがうたう声楽曲も「ベル・カントの真相」を伝えて雰囲気満点。解説充実全訳付、低音ファン必携の異色盤です!(Mercury)
【収録情報】
ボッテシーニ:
1. パイジェッロのアリア『うつろな心』と、その主題による変奏曲
2. ベッリーニの歌劇『夢遊病の女』による幻想曲
3. フランス歌曲『愛されている唇は』
4. エレジア(悲歌)
5. タランテッラ
6. アリア『すべてこの世の』
7. ベッリーニの歌劇『ノルマ』による幻想曲
8. レヴリ(夢想)
アルベルト・ロ・ガット(19世紀イタリアの3弦コントラバス)
ルーカ・アントニオッティ(エラール・ピアノ1871年製オリジナル)
エマヌエーラ・ガッリ(メゾ・ソプラノ:1,3,6)
19世紀のコントラバスの名手、ボッテジーニが残した作品を、19世紀イタリアの3弦コントラバスと1871年製のエラールのピアノで楽しむ。ロ・ガットのコントラバスは、ご愛嬌のような高音もあるが、とにかくよく歌う。19世紀のサロン的なエレガントな雰囲気が伝わってくる。(治)(CDジャーナル データベースより)